娠判定のやり方は3つあります。

  • (1)尿中のβ-HCGを検出する
  • (2)血液中のβ-HCGを検出する
  • (3)子宮内の胎嚢(注1)を超音波で確認する

(3)は特殊なので まず(1)(2)から...

妊娠してしばらくすると、胎芽(注2)由来の細胞からβ-HCGと呼ばれる、妊娠特有のホルモンが分泌されるようになります。
(1)(2) はこれを検出して妊娠の判定を下す方法です。(1)の尿を用いるやり方が一般的ですが(皆さんが薬局で買う妊娠チェックもこの方法)、(2)の血液の方が優れています。(2)

  • 感度が敏感なので、ごく初期の妊娠をつかまえることが出来る(注3)
  • 妊娠の判定以外に、胎芽の現在の状態も分かる(注4)

しかし病院内にホルモン測定の器械が必要になるので、手軽な(1)が主流です。

注1:「胎嚢(たいのう)」とは赤ちゃんが入っている袋です。妊娠5週半ばから超音波で見えるようになります

注2:「胎芽」は赤ちゃんのごく初期の状態です。「胎児」よりも前の段階で、受精卵→胚→胎芽→胎児 と進みます

注3:妊娠3週3日から分かります。「3週3日」がどのくらい早いかピンとこないかもしれませんが、次のように言い換えると分かるでしょう。
もし検査をして「妊娠ではない」となった時、そこから6〜7日経って生理が始まります。つまり生理が来るであろう、その日より1週間前の時点で妊娠かどうかが分かるのです。
ごく初期の妊娠をつかまえるのは大事です。たとえば次のケースを考えてください。
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不妊症の治療を受けている。妊娠判定は(1)の尿中β-HCGで行っているが毎回陰性に出る(妊娠ではないと出る)。
しかし一度(2)を使って早い時点で検査をしたら陽性に出た!(本当は妊娠していた)。つまり、私はごく初期の流産を何度も繰返していたのだ。
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こういうケースは皆さんが思っている以上に数多く存在します。このケースでは、今の不妊症の治療にさらに流産を抑える別の治療を加えるのが良策です。
ところが鈍感な(1)のみでは「今の治療で妊娠しない。別の不妊症治療に変更しないとだめなのか?」と、誤った方向に進んでしまいます。

注4:現在の状態とは
aiueo aiu◎ 元気(順調)
aiueo aiu◎ 流産を起こしかけて弱っている(安静をとりつつ注意深く経過を見なくてはいけない)
aiueo aiu◎ 残念ながら死んでしまった(今回はあきらめて次回またがんばろう)
aiueoです


て、ひとつ大事なことを...
HCGという注射があります。この注射をするとしばらくの間 体内にHCGが残り、(1)(2)の妊娠判定が陽性になります。つまり、妊娠ではないのに妊娠に見えてしまいます。ですから

  • HCGの注射は妊娠判定のだいぶ前から行わない

これが鉄則です。

後に(3)に簡単にふれて終わりにします。もう一度(3)を書くと

  • (3)子宮内の胎嚢を超音波で確認する

確かにこれが確認できれば妊娠は間違いないのですが、胎嚢が見えるのはだいぶ経ってからなので、その前に流産した妊娠を見落とすことになります。これが(3)の問題点です。

胎嚢は妊娠5週中旬から見え始めます。敏感な(2)は妊娠3週3日から分かるので、両者の間には約2週間の開きがあります

多くの学会が妊娠判定として(3)の胎嚢確認を求めていますが、理由は前述のHCG注射による誤判定を嫌っているのです。しかしこのやり方では「胎嚢出現前に流産になった妊娠」を見落とすことになり、最終的には学術的データの信用度が下がります。
我々 病院側がHCGの使い方に注意を払い、誤判定をなくすように努めなくてはいけません。

(文責 菅生紳一郎)