IMSI(イムジー)とは?
SG013_L.jpg顕微授精の最近のトピックは精子の「質」です。顕微授精の時に頭部に空胞のない精子を使うと、受精率・妊娠率が上がることが分かってきました。

IMSI(イムジー)とは、超高性能の顕微鏡で精子の頭部を強拡大し、空胞のない精子を選びだし、それを使って顕微授精を行う手技です。


通常の顕微授精の拡大率は200〜400倍ですが、IMSIでは4000〜6000〜8000倍ぐらいに拡大します。

IMSIのキモ(大事な点)は、真に性能の良い、超一流の顕微鏡を使うことです。並の一流の顕微鏡ではぼけた映像になってしまい、IMSIができません。

日本の学会ではIMSIに否定的な意見(IMSIは効果がないという意見)が散見されますが、それは良い顕微鏡を使わないからです。

顕微鏡の技術は独Leica社が他社を圧倒しています。日本ではニコンとオリンパスがポピュラーですが、それは「値段の割りには優れている」顕微鏡を販売しているからであり、技術的に優れている訳ではありません。
この辺の事情は自動車のトヨタと似ています。トヨタは世界的に有名な自動車メーカーですが、決して技術が他社を圧倒しているわけではなく、「値段の割りには優れている」車を販売している会社なのです。技術だけで見るとロールスロイス、フェラーリ、ベンツなど、より優れた会社が見つかります。

「技術が優れていれば経営もうまくいくのか」という疑問が生じますが、それは別の問題です

さて話を戻して先の学会発表ですが、最近ニコンとオリンパスが自社の顕微鏡に取り付けるアダプターを発売しました。これを購入すると今使っている顕微鏡でIMSIが可能になるという代物ですが、残念ながらニコン、オリンパスクラスの顕微鏡ではそもそもIMSIが無理なのです。

それでは前述の独Leica社の顕微鏡ならばどれでも良いかというと、そうではありません。
DMI-6000シリーズと呼ばれる、Leicaの製品群の中でも最も高性能な顕微鏡(価額は1000万円以上!)を使うことで初めてIMSIが可能になります。

したがって正式なIMSIを行うには多大な設備投資が必要であり、巷で多く行われているニコン・オリンパスを使ったそれは「IMSIもどき」でしかないのです。学会でIMSIに否定的な意見が出ている原因はここにあります。

さらにもう一つお話を…

それは、IMSIはけして魔法の技術ではないということです。「IMSIを行えば、誰がやっても顕微授精の成績が上がる」わけではありません。

そもそも通常の顕微授精で良い成績を出すには、顕微を行う技師の腕が良くなくてはだめで、腕の上手下手で成績が極端に違ってきます。顕微授精とは実は匠の技、職人芸の世界なのです。

最高の技術を持った人(具体的には、質の良い卵に顕微を行って卵の生存率が95%ぐらい、受精率が92〜93%ぐらい、流産率は10%以下。これが実現可能な人。こうなってくると「ほぼ神の領域に入った」感じ)が、さらに成績を上げようとする時にIMSIがものを言ってきます。限界まで到達した人がさらに壁を乗り越えようとする時に、IMSIが役立つのです。並の技師がIMSIを行っても、手順が煩雑になる分だけ逆に成績が下がってしまいます。

IMSIとはそういうものであり、素人には無縁の技術なのです。

(文責 菅生紳一郎)

DMI6000B.jpg独Leica社のDM-6000顕微鏡。 当院のIMSIは独Leica社のシステムをさらに特別仕様にバージョンアップした、世界最高性能のシステムです