平成23年4月30日

じめに

福島原発事故における政府の対応を非難します。

題提起

私は原発の専門家ではないので原発関係のコメントは控えます。
しかし医師として、つまり学生時代に放射線医学を学び放射線の知識がある立場として、現政府の対応を強く非難します。
問題点は「放射線被曝を無害なものに思わせよう」とする政府の行動です。
インターネットの「首相官邸災害対策ページ」から問題の部分を引用します。政府の見解がどのようなものか、まずは読んでください。
ちなみにオリジナルはここからアクセスできます。


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「被ばく」と「汚染」、「外部」と「内部」

平成23年4月18日

 「被ばく」と「汚染」の違いを正しく理解しましょう。また、被ばくには「外部被ばく」と「内部被ばく」とがあります。

外部被ばく

 放射線を出す物質(放射性物質、線源とも言います)が身体の外にある場合、この線源から出た放射線を浴びることを「外部被ばく」と言います。病院でレントゲン写真を撮ってもらうのは「外部被ばく」です。通常は被ばくを受けた人が放射線を出すことはありませんので、周りの人に健康被害を及ぼす危険性は全くありません。従って周りの人が自らを守るための放射線防護策は全く不要です。


表面汚染

 一方、放射性物質が衣服や身体の表面に付着することを「表面汚染」と言います。この放射性物質は、そこにある限り放射線を出し続けますから、表面汚染を持つ人も周りの人も放射線を浴びることになります。周りの人は、自らを守るために放射線防護策が必要です。また、この汚染が他人や環境中に拡がらないように、汚染拡大防止策を講じなければなりません。


内部被ばく

 放射性物質を吸ったり、飲んだりして放射性物質が身体の中に入った場合、放射性物質が身体の内部にありますので「内部汚染」といいます。内部汚染の結果として身体の内部構造が放射線の被ばくを受けることになりますので、これを「内部被ばく」と言います。この場合、極めて僅かですが周りの人が放射線を浴びることもあります。


今回の場合

 福島原発の周辺から避難された方々は、もし外部被ばくをされているとしても極めて僅かな線量であり、なんらかの問題があるとすれば衣服の表面や身体の露出部(頭、顔、手など)の放射性物質による「表面汚染」です。避難される時に放射線検出器で汚染がないことが確認されていますので、避難された方々には、周りの人に影響を及ぼすものは何もないことになります。


前川和彦 東京大学名誉教授
  ((独)放射線医学総合研究所緊急被ばくネットワーク会議委員長、
    放射線事故医療研究会代表幹事))
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問題は3番目の「内部被ばく」の記述です(以下、内部被曝 と漢字で書きます)。
放射線で危険なのが内部被曝なのですが、ここでは意図的に的をそらし、
内部被曝を「ささいなもの、取るに足らないもの、危険でないもの」に思わせようとしています。

ぜ内部被曝が危険なのか

放射性物質が体内に入っても、それが体から出て行けば問題はありません。しかし体内にとどまってしまうと、
そこから出る放射線で体の内部が半永久的に被曝を受けてしまいます。そのため十年後にガンになるのです。肺にとどまれば肺ガンに、
骨にとどまれば白血病に(白血病は血液のガン)、そして生殖器にとどまれば不妊症・流産・奇形児出産を引きおこします。

仮に放射性物質から出る放射能の量が少なくても、半永久的に被曝を受け続ければ、トータルの被曝量は膨大になります。
放射性物質は「そこから遠ざかれば被曝の強さは弱くなり」安全になります。しかし逆に「距離が短くなると被曝が強くなり」
危険になるわけです。
内部被曝は放射性物質が細胞の表面に張り付くので、距離がゼロになります。したがってそこの細胞は強度の被曝を受けるわけです。

このような理由で内部被曝は危険なのです。

発事故の現状

さて、内部被曝が危険だとしても、原発事故が終息(収束)に向かい世の中の環境が悪化しなければ、内部被曝は心配いりません。
政府の発表・マスメディアの報道を見る限りでは、世の中は望ましい方向に動いているように見受けられますが、
しかし本当にそうなのでしょうか?実際は報道とは異なり日々悪化しているのではないでしょうか?

私は次に提示する三つの理由から、「状況は悪化している」と考えています。

(1)上に述べたように、「内部被曝」の説明を政府は恣意的に歪曲して公表している
(2)政府の放射能に関する発表には「ただちに健康に影響がでるものではない」というフレーズが必ずつく
(3)母乳から放射性物質(ヨウ素131)が見つかったという事実

まず(1)から検討しましょう。
最初に一般論ですが、政府が発表する情報は、いらぬ誤解が生じないよう一字一句推敲します。
ですから政府の発表内容には、政府の心情がストレートに表されているわけです。
さて、再度(1)を眺めて分かることは

  • 嘘で構わないから、一見安心に思える情報を国民に与えて、その場をしのぐ

という政府の姿勢です。
これと今しがた述べた「政府の発表は心情を表している」ことを重ね合わせると、次の様な政府の意志が読み取れます。

  • 政府に不利になる情報は国民には公表しない

ならば「原発問題は終息(収束)に向かっている」という政府の発表を信じるわけにはいきません。

次に(2)ですが、基本的スタンスは(1)と同じです。つまり重要な点への言及を避け、的外れの話でうやむやにする姿勢です。
「すぐに健康被害の出る」放射線被曝など、よほどの状況でなければ起こりえません。
大事な点は、繰り返しになりますが、十年後のガンなのです。
政府はそちらには口をつむぎ、ピントがずれている「現在」に対して「安全」を強調する。
この(2)からも「政府の発表は信用がおけない」という結論が導き出されます。

一つ補足をします。最近政府がやり始めた別の手段は、法律で決まっている放射線の規制値を変更して、
強引に安全に見せかけるというものです。小学校などの教育現場における放射線許容量を引き上げたのはその一例です。
これが理に反しているのは明白です。本当に引き上げても構わないならば、今までの基準値は何だったのでしょう。


(3)は「その方の体内に放射性物質が入った」ということを意味しています。そのまま体内にとどまれば、それが内部被曝です。

「医師たるものがそのような『脅し』に近いことを発言して良いのか?言われたものの身になって考えてみたらどうか」という反論が
必ず出ますが、今回はそこを問題にすべきではありません。
皆さんに気づいていただきたいのは、「その方の体内に…」という文章は何ら誤ったことを述べていない、謙虚に真実のみを
述べているという現実です。つまり、原発事故の汚染がそこまで進んでいるのです。
放射性物質を取り込んだのは、当然ですが、その方だけではありません。その方は「たまたま母乳を検査した」から
分かったのであって、実は私を含め多くの人がすでに放射性物質を体内に取り込んでいる可能性があります。
検査をしないので気づいていないだけなのです。
「ヨウ素131の半減期は短いから体内に取り込まれても大丈夫」という考えがありますが、それは間違いです。
半減期が短いということは「出る放射線の量が多い」ということであり、危険に変わりはありません。

(3)は福島ではなく他県で起きました。それは「放射能汚染が広範囲に広がっている」ということに他なりません。


後に(次のステップ)

事態は皆さんが思っている以上に悪化しています。政府が理不尽なことをやり始めたのも「事態の悪化」を示す逆説的な証拠です。
ではこの先どうすればよいのか?
最初の一歩は正しい情報の収集です。

  • 政府・マスメディアの情報を鵜呑みにせず、種々の情報を集め選択し、現状を正しく把握する。具体的行動はそれから。

皆さんにはインターネットという強力な情報収集手段があるので、それを活用して下さい。ただしインターネットの情報は玉石混淆なので、
ふるいにかけて「玉」だけを取り出さなくてはいけません。
私なりに分かったことを書きますので、情報選択の参考にして下さい。

原発事故による放射能汚染の状況を知りたい場合は ここ が良いと思います。
原発事故の経過・その他の詳細な情報は ここ 、ただし内容がハイレベルでやや難解です。
政府の支離滅裂とも言える矛盾した行動を、歯に衣着せぬ文章で批評しているのが ここ
原発事故の原因・経過・将来の見通しなどを、可能な限り詳細に書き下した力作が ここ 。このサイトは必読です。
事故を起こした福島原発が実際はどのような状態か(マスメディアの報道とはだいぶ違う)、本当に終息(収束)が可能なのか、
その辺の事情を知りたい場合は、次の名前で検索して該当記事をお読み下さい。

  • 小出裕章
  • 後藤政志
  • 武田邦彦

さらに ここ も有益です。入会手続きと月に525円の会費が必要ですが、その価値はあります。


原発に関する書物を探している人は、最初にこれを読むべきです。

  • 「原子炉時限爆弾」広瀬隆 著 ダイヤモンド社
途中、大陸移動説の小難しいところが出てきますが、そういうところは読み飛ばして構いません。とにかく最後まで読んでみて下さい。
原発の恐ろしさ、それでもなぜ国は原発を作ろうとしたのか、原発事故が起きた時に電力会社に補償義務が生じるのか
(今これがニュースで話題になっていますね)など、原発の裏の裏まですべてが書かれています。

そろそろ腰を据えて真剣に考える時期に来ているようです。

文責は私にあります。
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菅生紳一郎
1951年生まれ
開成高校
東京医科歯科大学 医学部
同大学 産婦人科 入局
2001年 すごうウィメンズクリニック開院